68頭の肥大型心筋症の犬についての回顧的評価

Schober KE, Fox PR, Abbott J, et al. Retrospective evaluation of hypertrophic cardiomyopathy in 68 dogs. J Vet Intern Med

First published: 24 March 2022 https://doi.org/10.1111/jvim.16402

 

背景

犬の肥大型心筋症(HCM)についての臨床データが不足している。

 

仮説/目的

HCMの犬のシグナルメント,臨床徴候,診断,予後を調べることを目的とした。

 

動物

68頭の飼育されている犬。

 

方法

回顧的な多施設の研究。2003~2015年の間の医療記録について調べられた。心エコー図検査により左心室(LV)肥大を確認して診断された。

 

結果

345頭の犬でLV肥大が認められ,うち277頭が除外された。残った68頭は0.3~14歳齢で,主に10 kg未満(85%)で,性差は認められなかった。24%がシー・ズーで24%がテリア系犬種であった。大部分の症例(85%)で収縮期性の心雑音が認められた。運動不耐性(37%)と失神(18%)が一番よく報告された徴候であった。ほとんどの犬(84%)に対称性のLV肥大があり,一方で非対称性の中隔肥大と左心室自由壁の肥大がそれぞれ9%,6%の犬で認められた。孤立性心室中隔基部の肥大はみられなかった。僧帽弁の収縮期前方運動(60%)と左心室の拡張障害(拡張機能が評価された犬の89%)が一よく記録された。6頭の犬が突然死し,3頭で慢性心不全(CHF)へと進行した。診断後,生存期間は1~114日であった。

 

結論と臨床的重要性

犬の肥大型心筋症は左心室肥大が認められた場合に鑑別診断として考慮するべきである。小型犬が大きな比率を占め,突然死することがあるが,CHFへと進行することは一般的ではない。