キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルにおける犬種特異的な椎骨心臓スコア,椎骨左房サイズ,そしてX線左心房面積;基準範囲研究

Bagardi M, Locatelli C, Manfredi M, et al. Breed-specific vertebral heart score, vertebral left atrial size, and radiographic left atrial dimension in Cavalier King Charles Spaniels: Reference interval study. Vet Radiol Ultrasound. 2022 ; 63 : 156–163.

 

要約

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル(CKCS)は僧帽弁疾患(MMVD)に罹患しやすく,MMVDに伴う左心拡大の証拠を映し出すためにX線画像が頻繁に用いられる。椎骨心臓サイズ(VHS),椎骨左房サイズ(VLAS),修正VLAS(M-VLAS),そしてX線左房面積(RLAD)が世界的な心臓および左房サイズの客観的な測定項目として報告されている。CKCSの正常なVHS(10.6±0.5)は非犬種特異的な測定値(9.7±0.5)よりも高く報告されている。VLAS,M-VLAS,そしてRLADの犬種特異的なカットオフ値はCKCSでは報告されていない。この前向き基準範囲研究の目的は,臨床的に健康な成犬のCKCSにおけるVHS,VLAS,M-VLAS,RLAD値を評価することである。

組み入れ基準は身体検査において著変がないこと,心エコー図検査において正常なこと,そして胸部X線検査においてポジショニング不良や異常がないことであった。22頭は雌,8頭は雄であった。年齢は1~6歳齢であった。VHSの平均値は10,08±0.56(95%区間は9.87~10.29)であった。これは以前に発表された一般的な犬の基準値である9.7±0.5よりも優位に大きく,以前に発表されたCKCS犬種特異的な値である10.6±0.5(P<0.01)よりも優位に小さかった。VLAS,M-VLAS,RLADの平均値はそれぞれ,1.79±0.3(95%区間1.68~1.9),2.23±0.44(95%区間2.06~2.39),1.2±0.34(95% 区間1.07~1.33)であった。これらは以前に発表された基準範囲よりも優位に小さかった(P<0.001)。VHS,M-VLAS,RLADは性別,体重またはBCSに影響されなかったが,一方でVLASは体重にやや影響された。この研究の所見は,CKCSにおける胸部X線の評価の背景として用いられうる。

気管支軟化症の犬における臨床病理学的特徴,合併症,そして肺高血圧症の発生率

Gamracy J, Wiggen K, Vientos-Plotts A, et al. Clinicopathologic features, comorbid diseases, and prevalence of pulmonary hypertension in dogs with bronchomalacia. J Vet Intern Med. 2022 ; 36 : 417–428.

 

背景

気管支軟化症(BM)の臨床病理学的特徴の報告は,一貫性のない定義と循環器・呼吸器疾患が頻繁に併発することから,多岐にわたっている。BMに続発した肺高血圧症(PH)に関してはめったに言及されない。

 

目的

BMの犬は体型に関係なく高齢で,そして呼気努力の増加,1つ以上の合併症をもつであろう,そしてBMのない犬と比較してPHがより認められるであろう。

 

動物

呼吸器徴候について評価された飼育されている犬(n=210)

 

方法

2016年1月~2019年12月の間に,吸気・呼気の両方で呼吸を止めたCT,気管支鏡,もしくは両方を行った犬の医療記録を回顧的に調査した。BMの犬とBMでない犬の比較は,マン・ホイットニーの順位和検定またはχ^2検定で行われた(P<0.05で有意差ありとした)。変数の数が多かったため,単変量解析(p<0.005で有意差あり)により高い有病率(>25%)の基準が認められた(n=10)。(←?)有意な変数が,多変量解析に用いられた。

 

結果

気管支軟化症はすべての大きさ/体型の犬の41%;38%は10 kg以上で認められた。BMのすべての犬は1つ以上の循環器・呼吸器疾患を合併していた。BMの犬は有意に高齢であり(P<0.001),小さく(P<0.001),そして気管または主気管支の虚脱(P<0.001)もしくは気管支拡張症(P<0.001)が診断された。多変量解析は年齢,気管または主気管支の虚脱,そして気管支拡張症に関連して行われた。BMの犬では,PHはより認められた。

 

結論と臨床的重要性

高齢,小さい犬で有意に認められるけれども,BMはすべての大きさの犬,そして合併症をもつすべての症例で発症する。心エコー図検査は,BMが考慮される犬に対し,PHの有無を調べるために,行われるべきである。

 

68頭の肥大型心筋症の犬についての回顧的評価

Schober KE, Fox PR, Abbott J, et al. Retrospective evaluation of hypertrophic cardiomyopathy in 68 dogs. J Vet Intern Med

First published: 24 March 2022 https://doi.org/10.1111/jvim.16402

 

背景

犬の肥大型心筋症(HCM)についての臨床データが不足している。

 

仮説/目的

HCMの犬のシグナルメント,臨床徴候,診断,予後を調べることを目的とした。

 

動物

68頭の飼育されている犬。

 

方法

回顧的な多施設の研究。2003~2015年の間の医療記録について調べられた。心エコー図検査により左心室(LV)肥大を確認して診断された。

 

結果

345頭の犬でLV肥大が認められ,うち277頭が除外された。残った68頭は0.3~14歳齢で,主に10 kg未満(85%)で,性差は認められなかった。24%がシー・ズーで24%がテリア系犬種であった。大部分の症例(85%)で収縮期性の心雑音が認められた。運動不耐性(37%)と失神(18%)が一番よく報告された徴候であった。ほとんどの犬(84%)に対称性のLV肥大があり,一方で非対称性の中隔肥大と左心室自由壁の肥大がそれぞれ9%,6%の犬で認められた。孤立性心室中隔基部の肥大はみられなかった。僧帽弁の収縮期前方運動(60%)と左心室の拡張障害(拡張機能が評価された犬の89%)が一よく記録された。6頭の犬が突然死し,3頭で慢性心不全(CHF)へと進行した。診断後,生存期間は1~114日であった。

 

結論と臨床的重要性

犬の肥大型心筋症は左心室肥大が認められた場合に鑑別診断として考慮するべきである。小型犬が大きな比率を占め,突然死することがあるが,CHFへと進行することは一般的ではない。